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あたりまえの自由
手を繋ぐある家族の帰り道に
秋の風にふかれて、たんぽぽが笑っていた
月並みの川辺に住むザリガニたちにも その声は響いている
自由な犬の遠吠えさえもなんだか
楽しそうになびいている
そのあたりまえの日々には何かがたりない
誰かがいない あの子が見当たらない
その平々凡々が その幸せが 忽然と かすんでゆく
自由を奪われた青空がなみだを流し
その悲しみのしずくが自由の根を枯らしていく
どこにも生き場のない羽のない蝶々は
なんとか広い世界の向こうへ飛んでゆく
それを観て世界は終わっていないのだと我にかえる
自由は不自由と隣り合わせで
いつも鏡のように錯覚を起こしている
どうか心だけは自由でいてくれ どうか世界が広いままであってくれ
どうか正しさを歪まないでくれ
翼のはえたあの子をかえしてほしい。 どうか。どうか。あの子を
あるとき 笑い声の響き渡るあの街に 秋のあの風景が帰ってきた
もう二度とはなさないと誓う 月明かりのしたで
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